STORY 物語

むか~し むかし

ある村に凄腕の村医者がいました。

その名は児島又玄(ゆうげん)。

ある日、その地を治めていたお殿様(※1)が急病であるとの一報がゆうげんに届きました。

※1:当時、佐川を治めていた深尾氏1万石の殿様

ゆうげんは急いでお城に向かったが、実はこれ、殿様がゆうげんの噂を聞き、その腕を試そうと病気でもないのにゆうげんをお城に呼びつけたのでした。

すると殿様はニャンコの腕に糸を結び付けて脈を取らせました。

(当時は身分の高い者の脈を取る時は、幕の外で手首に付けた糸で測るのが普通だったみたい。)

殿様は幕の奥から尋ねました。

「薬は何が良いかのう?」

ゆうげんは言いました。

「かつお節になされ。」

お城を出たゆうげんは馬鹿にされたと怒りました。

家に帰っても怒りが収まらなかったゆうげんは自分の家に火を放ち焼身自殺してしまいました。

村人から信頼の厚かったゆうげんの死に悲しんだ村人たちは彼のお墓を建て、怒りを鎮めるためにお地蔵様をお墓の前に建てました。

これが現在に残るゆうげん地蔵です。それからかれこれ約320年、高知県佐川町の斗賀野村音ヶ谷の大きなモッコクの木の下に丁寧に祀られて、みなさんを見守ってくださっています。

【お地蔵様とは】

正式には地蔵菩薩。地蔵菩薩(じぞうぼさつ)は、仏教の信仰対象である菩薩の一尊。釈尊が入滅してから弥勒菩薩が成仏するまでの無仏時代の衆生を救済することを釈迦から委ねられたとされる。

地蔵菩薩は、釈迦の入滅後、5億7600万年後か56億7000万年後に弥勒菩薩が出現するまでの間、現世に仏が不在となってしまうため、その間、六道すべての世界(地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道)に現れて衆生を救う菩薩であるとされる。

地蔵菩薩の起源は、インドのバラモン教の神話に登場する大地の女神プリティヴィで、大地を守護し、財を蓄え、病を治すといった利益信仰があり、これが仏教にも取り入れられ、地蔵菩薩が成立したとされる。